MOST@BASEMENT BAR

1月も終わりじゃないか。カネはどんどん少なくなりつつもなんとか賃貸住宅の更新作業を済ませる。どうやら家賃滞納者のブラックリスト化が実現されてしまったようだが、金持ち相手の商売にいくことはできない人たちが貧乏人のココロと身体の隙間に資本を貼付けてショーバイにしようとしている前振りなんだろな。
そんななか、ひとり下北沢へ。4年ぶりのMOST名義でのライブ。core of bellsとライン京急のパフォーマンスを見終わり8時半過ぎくらいに始まる。core of bellsは落語の枕みたいな話から本編へ隙間なく繋いでゆく感じか。いずれの曲も日常の出来事のあるコトバがじわりじわりと浮かび上がってきたところで、大きな音と共に歌が始まる。途中、ファンからのFAXコーナーというのもあり、彼らのライブではおなじみなのかもしれないけれど、笑ってしまう。横浜市都筑区の「都筑区」を読めないベースのお兄さんはひょろひょろしてるけどかっこ良かった。
ライン京急では、大谷さんが山手線に乗っているときに見かけるお世辞で35歳くらいと25歳くらいのOL二人組の会話を想起し始める。お世辞35歳の方がどうやら「わたし、水嶋ヒロにしか興味ないのよね」という発言をするらしいのだが、昨年まさに額面34歳の女性が全く同じ発言をしているのをとある場所で聞き、というかメント向かって云われ、とてつもない不条理な感情がわき起こってきたばかりだったので、こちらも吹き出してしまう。
で、MOSTのライブ。「久しぶり」というPhewさんのひとことから全面展開。ファーストアルバムからの曲が多かったような気が。会場はぎゅうぎゅう詰めの満員で、息ができなくなりそうな感じだったけど、ステージが見づらい、柱で壇上の一部が隠れてしまうような位置に立ち、なんとか見続ける。Phewさんの落ち着いていて、身体をあまり動かさない歌い方と、山本久土さんの激しいアクションと、地味だけど少し怖くて「暑くて帰りたい」とまで途中で呟く山本精一さんの3人の姿しか見えない位置。
彼らの歌はいつ聞いても同じ一歩、第一歩、生きるためにしかたなく付き合ってしまっている線路から脱線するための第一歩をはっきりと示していてくれる。過去の曲だろうが、いつでも誰でもが脱線のための一歩を踏み出せるヒントと勇気を聞く人の身体に充満させてくれる。
はたしてどうして、Phewさんがまっすぐと目の前の壁、観客の頭を通り越して、ステージに立つ目線からそのまままっすぐ前を見つめ続ける視線、揺るがない視力。あの目線の先には脱線後の世界があるのだろう。だけどたぶんそれはPhewさんにも見えないし分からないものかもしれない。彼らのライブは、ただいつも、目に見える世界から脱線してゆくための第一歩だけを、歪んでいるけどクリアな音と、慌ただしいけどハキハキしたコトバの歌によって、聞く人と演奏する人の両方に、目に見えるものとして、こっそり教えてくれるのだ。