Small Town Talk

のんびり構えていたところに、娘の保育園問題が発覚し、今更ながら自分のダラシナサが身に沁みる。
小川プロ特集で見逃していた「三里塚・辺田部落」(1973)の2回目の上映になんとかアテネフランセへ向かう。
この作品の4年後に「五月の空 里のかよい路」(1977)が撮られるものの、「辺田部落」撮影後、小川プロは山形県へ移り住み、「牧野物語」や「ニッポン古屋敷村」に繋がってゆく。
「辺田部落」はといえば、闘争と日常が完全に同じものとなった反対同盟の結束が強い部落の人々が描かれる。
部落に住む青年行動隊の二人が、突然、成東警察署の私服警官によって、逮捕され、90日間に渡って拘束されることになる。青年を逮捕しにやってきた私服警官と青年、それを取り巻く家族、周辺の農民たち、その様子を撮影する小川プロのスタッフ。画面の中では、縁側に座って逮捕状を読む青年以外、私服警官ですら、どこにいるのか、誰が誰だか判明が付かない。それは、とても穏やかな空気をもって、捉えられているような気がした。反対同盟が闘う対象はもはや警察でも、公団でも、機動隊でもなく、また国家でもなく、ただひたすら自らが田畑を耕し、メシを食い、生活し、死んでいくだろ辺田部落という土地そのものへの執念が、闘争を続ける自らへ闘う対象を変えていってしまっているかのような印象を受ける。闘う日常には、もはや外部に闘争する対象は必要なく、部落での生活を阻害されるであろう要素を想定、想像し続けることで、断続的にアクションが変化し、決定されてゆく。「辺田部落」は、日本、はたまた千葉県成田市三里塚という固有の場所にありながら、「闘う日常」に生きる農民たちは、「決して負けない」というただ一点のみを確保し続ける、どこか抽象的な場所に存在する人間として浮かび上がってきていると感じられるところが、「三里塚」シリーズの中でも異色で、その後に続く「牧野村」を舞台にした作品とも異なり、小川プロのフィルモグラフィーの中で、最も不気味な感触が残った。