黒猫と赤いマット

気がつけば、3月に突入している。
家で独りでぼーっとしていることに慣れてきた。映画館に向かうためだけに昼間、電車に乗ると、当然スーツを着たおじさんたちを見る。ノートPCを開いて仕事してる人、携帯電話のメールをチェックしてる人。彼らはもう家で独りでぼーっとしたりする時間を過ごすことは一生ないのかしら。何か生産している気になっているのかもしれないけれど、もう世界はこれ以上改善されることはありませんでした、といったような物語のエピローグに出演依頼がきたエクストラにしか見えない。
1日は映画の日ということで、夜はバウスシアターへ。「クローバー・フィールド/HAKAISHA」(2008)。
主人公の恋人が自宅に残されていることを知った若者たちは、アメリカ軍の避難要請を無視して、彼女を救いにニューヨークの街を走る。途中、破壊され続ける路上に白い馬が牽く馬車が画面を通過する。「フィクサー」(2008)で、ジョージ・クルーニーが車で走りぬけて到着した小高い丘に唐突に現れる3頭の白い馬を思い出す。「フィクサー」の白い馬は嘶き、二本脚で立った後に、丘を降りていったけれど、この映画では、アスファルトの道路をカッポカッポと音をたてて通過する。どこからかやってきて、どこかへ行ってしまう白い馬を唐突に見せられると、この世界はこれから本当に終わってしまうのだという感覚を強くされる。