「P.S.アイ ラブ ユー」リチャード・ラグラヴェネーズ

どんどん心ここにあらずという状態になりつつも適当に仕事をこなす月曜日。
京橋で打ち合わせを終え、映画の日ということで、有楽町はシネカノンで「P.S.アイラブユー」(リチャード・ラグラヴェネーズ)。
泣きました。週明け月曜日のこんな題名の映画にサラリーマンの男が一人で見に来ているのは、はたらかみると、気持ち悪い感じなのでしょうが、わき目も振らず泣きました。ヒラリー・スワンクは決してきれいとはいえませんが、やっぱり好きになりました。ジーナ・ガーションはやっぱりかっこいいです。夫が死んでからの1年間を春、夏、秋、冬と四つのチャプターに分け、夫の死そのものの描写は省略し、夫が生前にしたためていた手紙を緻密な段取りの元に寡婦に届け、その手紙の指示通りに彼女を動かし、物語が進んでゆく。各チャプターの切れ目だけでなく、各シーンごと、カットごとの「省略」の仕方が巧妙で、ぐいぐい引き込まれます。
二人の人物を配置し、切り返しを行う際、イマジナリーラインは超えずに、人物の配置を逆になるような動きを役者にさせて、寄りの絵、引きの絵を組み合わせることで、あたかもイマジナリーラインを越えてしまったかのような印象を受けるシーンが随所にあり、その演出、撮影、編集は主人公の夫婦以外にも個性溢れる人物を配したこの映画の中において、さまざまなバリエーションで引き寄せられ、離れ離れになる「二人でいること」という事態をいつでも緊張感でいっぱいにすることに成功しているように思われます。
ラストシーン近く、キャシー・ベイツヒラリー・スワンクが公園で歩きながら話すシーンは、亡き夫の作戦(?)の最後に相応しい、母も娘が依存しあうのではなく、共に未来に向かって逞しい一歩を踏み出すことができるのだという希望にも絶望にもよりかからない素晴らしいシーンで、ここでも涙がこぼれます。
あぁ、それにしてもジーナ・ガーションはたまらないなあ。