「アイズ」ダヴィド・モロー&ザヴィエ・パリュ

週末、これまでの行動、行為、そして意識そのものをすべて無に帰して、一からやりなおさなければならない、と心に決めたくなる事柄が間もなくやってくると予想してみると、それはそれで空しいもので、雨のち曇りの天気と、急に白血球の数が増えているらしい相変わらず絶不調な体調と相まって、さすがに生きる気力を失いかける。
日曜日はといえば、子育てに集中しつつも、ジムと映画。渋谷東急で「アイズ」(ダヴィド・モロー&ザヴィエ・パリュ)。ジェシカ・アルバ主演ということで、なんとなく劇場に駆けつけると日曜日の昼間なのに、観客は二人くらいしか見当たらない。映画は、盲目のバイオリニストである主人公が、角膜の移植手術を受けるのだが、移植された角膜の提供者、ドナーが生きた過去の情景が彼女に見えてしまう、そんな理不尽な手術後の出来事が中心になって進む。手術後の担当医の力を借りてドナーが住んでいたメキシコの家に行った挙句、アメリカへの帰り道、再び盲目になるべく事故に遭遇し、目が見えないままのバイオリンの演奏で物語は終わる。
暗い現実を見てみようと手術によって、視力を回復したものの、再び盲目を選んでしまうという女性の物語は、世界全体を覆う閉塞感に対して自意識のみに閉じこもることで対処しようとしがちな、現在の普通に生きる人たちの傾向をなぞっているような気がした。都合の悪いことは何も見ないことでかろうじて、前進しているつもりになれる、そんな傾向。