えきすとら

品川インターシティの下には、だだっ広い公共の広場がある。今は昼休み。オフィスレディーとサラリーマンがご飯を食べたり、おしゃべりしたり、タバコを吸ったりしている。コーヒーショップの内側からはそんな彼らの様子がよく見える。コーヒーショップからは外の音は全く聞こえない。しばらく焦点を一番遠くに合わせて、つまらぬ自己意識を上の方にかすかに見える青空へ溶かす。すると、かなり大きな規模のその広場でめいめいのお昼休みを過ごす人間たちが、全員エキストラに見えてくる。撮影スタッフはどこにいるのかしら。どこにもいないよう。エキストラはエキストラでも、みんなが自分以外はエキストラだと認識してしまっているようなそんな広場。品川インターシティ。高層ビル群で労働に従事する人々が下界に下りたとき、できる限り他者へ無関心でいられるようにこの広場は設計されていることに、数年以上通っているこのビルの下のコーヒーショップで今日初めて気がついた。意味ありげに植えられた植物たちはすべて添景に見える。